「普通、ありがとうだろ?大事なモノ拾ってきてやったのに」
「頼んでないし」
背の高い彼を見上げれば、日に焼けていて、端正な顔に顔が火照りそうになる。
「俺、そのスケッチブックのモデルですけど?」
中身を見られたことに驚いて、私は、思わず目を見開いていた。
「え?」
彼は、スケッチブックを私から取り上げると、ペラペラと捲り、自身の顔の横に並べた。
「ゴーグルと、スイミングキャップでわかりにくいけど、ほらホクロの位置同じだろ?」
彼は、唇の左下のホクロを指差しながら、ニッと笑った。
「俺の名前は、橋本来斗。夏音が、いつもこっそりプールサイドで書いてたのは俺でした、って事で宜しく」
それが私と来斗の夏の恋の始まりだった。