私と来斗は、高校の同級生で、出会いは太陽が、嫌味な程に輝いてみえる夏の海だった。

「ばかやろーっ!……はぁっ……はっ」

私は、目が覚めるようなセルリアンブルーの絵の具を撒き散らしたような、青く、それでいて澄んだ海に向かって大声を張り上げていた。

心の中の涙の箱が、(あふ)苦しかったから。

「お、すげぇ、デカい声じゃん」

振り返れば、金色の短髪に、ピアスを三つ揺らした、私と同じ学校の制服姿の彼が、しゃがみ込んでいる。

「誰?」 

私は、分かっていて、そう訊ねた。

「さて、誰でしょーか」

うちの学年は8クラスもある。同じクラスにでもならなければ、名前も顔も知ってるというのはおかしい。

「やっぱ、どうでもいいっ!見ないでよ!」

私は、知らないフリを突き通すことに決めた。

「へぇ、気強っ。ま、でも嫌いじゃないけど」

彼は、立ち上がると、私の目の前にスケッチブックを突き出した。みれば、さっきゴミ箱に無造作に突っ込んだ、私のスケッチブックだ。そして、私の直筆で自身のフルネームが記載されている。

「な、何よ!」

「これ、アンタのでしょ?南夏音」

私は、ふんだ来るようにして、スケッチブックを彼から取り上げた。

「最低っ」

彼と話す緊張感から、可愛い受け答えなんて、勿論できっこない。