「……覚えてるよ。恋の終わり、みたいだか
らだろ」
「うん……キラキラしてる時間は、あっという間で、気づけば恋しい気持ちは、始めからなかったみたいに、小さな灯と共に落ちて無くなってしまいそうで、こわかった。来斗とずっと一緒に居たかったから……」
五年前と同じように、来斗と私の線香花火は、同時に、砂の上に微かに音を立てて、落ちて消えた。
「夏音、愛してた」
「来斗……ありがとう」
灯りが、消えた夏の海は、暗く月明かりだけが、ぼんやりと私達を照らしている。
「もう来世は、会わないから……」
こんなツラい恋、一度味わえば十分だ。
「来世は、また俺が、必ず迎えに行くから」
でももし、神様の意地悪でまた出会うことができたのならば、きっと来世もまた来斗に恋をするんだろう。
気がつけば身体中に温もりを感じて、来斗のお日様みたいな匂いが、夏風と共に混ざり合って私の体に纏わりついていく。
「大好きだったよ」
私は、来斗の胸に顔を埋める。この温もりも、匂いも声も貴方を構成する全てを忘れてしまわないように。
見上げた来斗は、出会った頃のような少年みたいな顔で笑った。
そして私達は、砂浜の上で初めてのキスをしたように触れるだけのキスをした。