白虎は、血だらけのまま、尚も僕の前で足を踏ん張りながら、封水が消えた方角を見上げている。

「……もういいよ、お前もありがとな。おやすみ」

呼吸荒く、クゥーと鼻を鳴らす白虎を、ゆっくり包み込み、両手を合わし霊界へと返す。
これで、暫くは、白虎は、使えない。

そして、もう少しで、白虎もろとも、僕は消されていた。

さすがは、あの志築様とも互角いや、それ以上とも言われていた最強の元影狩師だ。 


「運が良かったな」

瀕死の華乃のことがなければ、正直、危なかった。 

ふぅーっと大きくため息を吐く。身体はあちこちが、痛む上、白虎が使えない。 

(少しマズいな……)

自身の張った屋敷を包んでいた結界を内側から解きながら、屋敷の外へと足を進めると、僕は、屋敷の外へと続く最後の曲がり角とは、反対側の座敷の襖をあける。

「っ……やられた」

(……華乃の仕打ちへの報復か……)


そこには、柱を背にして手足を縛られたまま、グッタリと動かない幸太の姿があった。