ーーーーパシャン…水の、音。 

 僕は、咄嗟に後ろに飛び上がり手を交差させ結界を張る!ほぼ同時に円錐状の水の刃が無数に降り注ぐ。

パンッパンッという破裂音と共に霊力の塊が真正面からも飛んでくる。

ーーーーほとんど一瞬。


畳は水で滴り、先程の衝撃で所々に穴が空いいた。僕の結界を中心にあたりの障子が左右に全て吹き飛んだ。

白虎が、僕の前に立ち塞がり、封水に一声鳴き威嚇する。  


「くっ……」

呼吸すらできないほど刹那だった。

霊力を飛ばして封水の霊力の塊にぶつけたが、向こうが一枚もニ枚も上手だ。

実力差なんてもんじゃない、圧倒的な力の差だ。

僕の頬と腕に裂けた感覚と血が流れ出したのが分かった。白虎が庇ってくれなければ致命傷だっただろう。 

白虎の体は真紅に染まり、口元からは涎と共に赤い血液が、水溜まりを作っている。


「ヒヒヒヒッ、モロに当てにいったんだけどな。へぇ、腕上げたな。……暇だったら遊んでやりたがったが、うちの姫が死にそうなんで、この辺りで失礼するよ。そんでもって、志築にはまた、礼に伺うからな」
 
にやりと笑うと、グッタリとした華乃を抱え、そのまま、封水は、闇夜に溶けるように消えた。

その姿が見えなくなってから、僕は片膝をついた。

「はぁっ……はっ……はっ」

傷を少しでも小さくするために、自らの体に掌を当てて霊力を発動させる。僕は、冴衣様ほどの治癒術は、使えないが、少しだけ、痛みを和らげることはできる。

頬の傷と左腕をそれぞれ治癒術を施してみるが、結構深い。なんとか太い血管の出血だけ止める。