「ええ、珠は、霊力をもたない一般人への投与は副作用はありません。大なり小なりのしっぺ返しは、免れませんが……。ただ、霊力のある者への投与は禁忌。犯してはならない領域です。これは影縫師、影狩師間で唯一の古からの約束事のはず。禁忌を犯した者は、永遠の命と引き換えに自我を失う。もはやヒトの領域ではないと」  


「……そう、だからこそ、俺たちは、真遥から手を引く。お前達、いや志築は、真遥を殺したい。今回は……お互いの利害が一致したってことで一度きりの協定だ。あとは……霊印のお姫様が持ち堪えられるかどうかだな。御津宮のお坊っちゃんが、来るまで持つかどうか。ま、そもそもあのお姫様は、自分で片をつけるつもりだよ。健気だな」


封水は、薄気味悪くヒヒヒと笑った。  

「……僕の願いはただ一つ。我が主の願いを叶えるのみ
」 

「ふん、霊印のお姫様の犠牲もある意味想定内か。面白いね。面白い奴だ。俺は偽善の忠誠心だけじゃなく、そういう残忍さを待ち合わせてる奴の事は嫌いじゃねぇ」
 
封水は、両手を持ち上げた。

(……来る!!)

「さてと、お手並拝見だな!」