「しっかし、極上の『珠』ばかりだな、助かるよ。これだけの寿命があれば十億はたやすいな」

珠は、人間の寿命へと変換できる。この珠を使った裏取引によって生まれる金銭が、影縫師達にとって、暗躍するための財源となっている。

満足げに封水が、絹袋を撫でた。 

「お渡しした『珠』は全て足はつかないようにしてありますのでご心配なく」

「これ、志築の坊ちゃんは、知らないんだろ?」

「ええ。志築様にご迷惑をかけるつもりは毛頭ございません」

食事を終えた白虎が甘えるように、僕に身体を擦り付ける。

「……真遥様の件は、今夜間違いありませんよね?」

「ああ、今夜が真遥の『最弱の状態』には間違いねえよ。真遥の今の肉体はもう限界だ。新しい器に買い替えねぇとな。もたねぇよ。真遥には十分に稼がせてもらった。もうこちらは用無しだ、それに、これ以上はケツふききれないもんでね」

「そうですか。一つお尋ねしても?」

「どうぞ」 

封水が、愉快そうに口元を上げた。 

「ばらまいた影の小さな珠は、何に?」

「ああ、あれか、ここ最近は特に真遥の調子が悪くてよ。…ここまで言えば分かるだろ?」

「……禁忌ですか」

「ご名答!さすがだな。知ってたのか?」

無精髭を摩りながら、封水が、唇の端を持ち上げた。