「……ずっと聞きたかった……あの日、礼衣に何があったの?礼衣が、自殺なんてする筈ない!答えて!」

「あはははははっ。自殺?……志築がそう言ったのかい?」

「え?……な、に?」

礼衣は、自殺と聞かされていた。両親からも志築からも。違うのだろうか?

でも、そう言われたら、実際に……私は、礼衣の遺体は……見てない。まだ小さいからと、お葬式には両親しか出席しなかったから。 



ーーーー自殺…じゃない? 


「教えてあげようか?」  

にたりと真遥が嗤う。


頭の中に、志築の声が響いてくる。

(やめろっ!冴衣っ!聞くな!) 

きっと聞いてはいけないことだ。志築が、私に話さなかったこと。いや、話せなかったことなんだろう。

「自殺……じゃないの?」

「……志築が殺したんだよ」

私の心はあっという間に凍りついていく。

「な、に言ってるの?志築は、そんなことしない。人は殺さない!」

真遥は、唇を三日月に模した。

「可哀想なお姫様だね」

その声と表情に全身から鳥肌がたつ。真遥の瞳は、もはや正気じゃない。声も無機質で抑揚がまるで無い。

「君が知ってる志築は、志築じゃない真遥だよ。僕が本当の志築」

「……何、言ってるの……?」

ーーーー狂ってる。

「志築は、長子として御津宮に生まれたんだよ。僕が、本当の弟、志築だよ」

「え?」

志築は、二卵性双生児だ。志築が本当は御津宮の嫡男?真遥が次男だった?そんなこと……ありえるのだろうか。

志築からは、勿論、うちの両親も上役達からもそんな話は一度も、聞いたことない。