夜の公園は、昼間のそれとは異なり、闇夜に佇み静寂に満ちている。誰も遊ばない遊具は月の光を一身に浴びて、一つ一つが我が身を主張するかのように、影を落としている。

司令書に記載されていた公園は、ジャングルジムを中心に右手に砂場、左手に鉄棒。その周りにブランコと滑り台が対称になるよう設置してある。

どこにでもあるありふれた公園。

ただ一つをのぞいては。

それは、公園の北の端にある柳の木。

古くは、この柳の木のすぐ前に川が通っていたようで、十年ほど前の土地開発事業によって埋め立てられたようだ。その当時は、連ねて何本か植わっていたようだが、今は、公園の片隅の、この一本だけだという。 

「思ってたよりも、広い公園だね。冴衣、大丈夫?」  

志築が、私の異変に気づいて覗き込んだ。既に公園全体が重苦しく、不快な空気に包まれている。一般人でも少し霊感のある人ならば、今のこの公園は本能的に避けたくなるような、異様な空間と化していた。

「うん……大丈夫だけど。すでに息苦しい」

気づくと無意識に、私は、着ている黒のワンピースの首元を握りしめていた。こんなことしても息は、しやすくなどならないのに。