「……っ、おいっ志築!」

俺は、突然目に見えない力によって、ぐらりと体勢を崩された。

「志築!!」

「……え?何だ?これ……」 


ーーーー康介の俺を呼ぶ声が遠くなる。

目の前の景色が、別の景色と重なる?

俺は、思わず自身の手を見つめるが、その手は透けて、目の前ではない、別のビジョンが、映し出される。

 
どこかの屋敷?椅子に座らされ手足を、誰かが、拘束されている?……?

ーーーー誰かかの目線だ。誰の目線だ?誰が?後ろの丸い窓辺から満月の光が差し込んでいる。

ゆっくりと近づく影……。 

「……誰?」

(え、この声)

ゆっくりと近づく影が椅子の前で止まる。伸ばされた黒髪を、掻き上げると窓から差し込む月の光でその顔が露になる。

「真……遥」

ーーーーおもわず口を覆う。真遥だ!


「おい!志築!」

俺は、一点を見つめるようにして前屈みになる。崩れ落ちそうになった俺を康介が抱き止めるようにして、抱えた。

「融!志築にだけ、何か見えている?!」

「わかりませんっ、ただ、志築様の瞳が……」

慌てるように、融が志築の肩に触れるのと同時に康介が俺を覗き込む。

「志築!お前の瞳どうなってる?!何が見えてる?瞳に此処じゃないモノが映ってる!」

「見え……る……んだ……真遥が」

「な、何だって……?」

「志築様っ!」

俺は、康介と融の手を振り払うようにして、目を凝らす、そのビジョンをより鮮明に見ようと。

ーーーー誰の目線?

ーーーー誰の声?