「俺らを騙すから、こうなんだよ」

さらり……と切り落とされた銀の髪が畳にゆっくりと落ちていく。華乃は、ゆっくりと再び俺に視線を合わせる。

「次は首。本気だよ、俺」

心の奥から、黒い靄が湧き上がってくり。
目の前のこの女を切り裂きたくなる。

「……随分と、非道な方なのですね」

「……誰にいってんの?」

「志築!」

康介が間に割って入る前に、俺は、華乃の左肩に霊刀銀河を突き刺した。刀の根本までゆっくりと突き刺す。

「……っ!」

「……へえ、結構我慢強いんだな、声一つ位は出すかと思ったけどな。」

華乃を見下ろすようにして耳元で囁くと、俺は、ゆっくりと霊刀を引き抜いた。

「志築!やめろ!華乃を殺しても何もならないだろ!」

「……わかってる、康介、ちゃんとわかってるから」 

俺は、康介の瞳を真っ直ぐに見る。


ーーーー殺さない。

お前らがそう言うなら誰も殺さない。そのかわり誰も殺させない。


「……ちゃんと、わかってんならいい」

康介が、それだけ言葉を吐くと口をつぐんだ。

右掌で左肩をぐっと押さえた華乃の足元にはすでにに血溜まりができている。

「失血死したくなかったら、早く言えよ」

俺は、血のついた霊刀を再び首元へ向けた。

「……はっ、はぁ……」

華乃は、美しい顔を苦痛に歪めながら、俺を睨み上げている。

「……時間稼ぎすんな。真遥はどこだ?さっきこの部屋に入った時のあの蝶。お前の式神だろ。誰にやった?焦らすな!」

「……くっ、真遥様は随分と前に……ここを出られました。あなたが…来られたら、太陽は月にはなれない。……月はもうすぐ満ちる。月は神になる、もうすぐ会えると」 

月が満ちる?満月の夜のことか?
もうすぐ会える……?誰に?

「おい、真遥はどこだ!さっさと言え!」

華乃の着物の襟を掴み、首元を締め上げていく。

「……こ、れ、以上は……何、も」

華乃の呼吸はあがり、失ってゆく血液で体はバランスを崩し、再び床に手をついた。

「……はぁ、はっ、はぁっ……」  

「お前っ!」

康介が、俺と華乃の間に立ち塞がった。

「康介、どけ」

「志築、これ以上華乃は何も知らない。もし知っていたとしてもだ、死んでも言わない。」 


そして、康介が、制するように、俺の肩を掴もうとした、その時だった。