ーーーーどのくらい走っただろうか。

私の手元の腕時計は深夜一時半を過ぎた頃だ。
首都高速を降りて郊外へ向けて走り出してから随分とたつ。

そろそろ三鷹に入ってもいい頃だ。相変わらずスピードを緩めることを知らない幸太にしがみつきながら、ふと目に入った風景に、私は、言葉を失った。


ーーーー嘘!

それは、調布のシンボルといえる建造物。青と赤を基調にライトアップされた東京スタジアムが、夜空に輝く宇宙船の様に暗闇を煌々と照らしていた。

三鷹に、向かってない?道を間違えた?……幸太が間違える?

「……幸太?幸太っ!」

「……あーあ、バレちまったか、あれ見りゃバレるか。ははははっ」

幸太がこちらに僅かに顔を向ける。

顔の表情まではわからない。でも幸太が道を間違えた訳じゃない事だけは、かろうじて理解できた。 

「……幸太、一体」

「悪いな、冴衣」


ーーーー口元に笑みを浮かべると、幸太は更に深くハンドルを回して加速した。