ーーーーえ?一昨日?仮免?

一瞬、幸太の言葉を頭の中で反芻する。

「馬鹿!仮免なの?!乗ったの初めてなの!」 

「は?仮免馬鹿にすんな!乗れんだからいいだろ、別に!」

「全然良くないっ!」

どおりで運転がめちゃくちゃな訳だ。

「だから幸太は嫌なの!幸太の馬鹿!!あり得ないっ!!」

「あーっ!!うるせー!!」

私は、後部座席から散々悪口を投げつけながら、更にはまた腹を締め上げた。

顔はみえないが、幸太が、げんなりとしていることだけはわかる。

「何よっ!何とか言いなさいよっ」

幸太が一瞬だけ振り返る。

「だまれ!お前、じゃじゃ馬どころか暴れ馬じゃねーかよっ!!」

「な、何よ、それっ!」

幸太は目線を元に戻すと、少しだけスピードを緩めた。耳を駆け抜けていく風の音が弱まり、幸太の声が聞こえやすくなる。

「なぁ……冴衣」

真面目なトーンの幸太に、私は目をパチクリとさせた。

「……死ぬなよ」

「え?」

「なるべく、俺も……見てるから」

幸太は、それだけ言うと、再びスピードを上げた。