それなのに、姉はなぜ自殺したのか。

三鈴家が接触にあたり、志築に一つだけ条件をつけていた。

『霊印礼衣の妹、冴衣を連れてくること事』

ーーーーぎゅっと下唇を噛み締めた。

志築はいつもそうだ、肝心なことは言わない。そうやって守られて庇われることが、少なくとも私には、重荷だという事を、わかってない。

でも……多分、それの本質は、志築も同じだ。私の中の礼衣が、志築を縛っていることを、本当はずっと……ずっと前から気づいていたから。

時々、志築が泣きそうな顔をするのは、私の中の礼衣を見てるから。もういいかげん……終わらせてもいいんじゃないかな。

ねぇ……志築。



私は幸太の後ろで、満点の星空を眺めてから、溜息を一つだけ吐き出した。

今夜、何かが終わる。そんな気がした。


「ところで、幸太!バレてないかな?」   

屋敷を抜け出してから、そろそろ一時間が経つ。夏宮家に置いてきた自分の分身が上手くやっているか気になって仕方ない。

「あ?俺の分身の術は完璧だからな!絶対バレない!」

屋敷を抜け出すにあたり、幸太の術で作った分身を目くらましに置いてきたのだ。

幸太は、霊力を使って自分自身は勿論、他人をもコピーして実体化させることができる。ただし二体までらしい。

それ以上になると、人の形はしているがコピーとしての中身のクオリティは極端に下がるとのことだ。