深夜0時すぎ、首都高速を一台のバイクがスピードを上げて走っていく。車と車を絶妙なタイミングで、まるで縫う様に走り抜けていく。

「ちょっ、馬鹿!危ないでしょ!」

幸太にしがみつきながら、私は、ピアスの光る耳元に向かって声を張り上げるが、当の本人に届く様子はない。

時速百キロは優にでているであろうホンダ400Xは、月夜に銀と輝き更にスピードを上げていく。

「冴衣ー!マジで捕まってろよ、落ちても拾わねーからな!」

背中越しに粗野な言葉が降ってくる。

「落ちても!って、馬鹿!スピード落としなさいよ!」

私は、これでもかと声を張り上げる。


「間に合わねーだろっ!とにかく!俺にそのまま引っ付いてろよ!お前落っことしでもしたら!また当主に怒られるだろっ、この俺がっ!」