「それはどういうことでしょうか?」

視線はそのままに、顔色一つ変えずに僕は、答える。声色もあえて単調にし、心のわずかな隙に蓋をする。この事は、僕の独断だ。康介様にもお伝えは出来ない。

「言おうか?……お前が、誰に、何させようとしてんのか?」 

思わず、眉が少しだけ揺れた。

(……康介様は、どこまで知ってるのだろう?)

口角を上げた康介を見上げたまま、僅かな沈黙が流れる。

「俺の能力みくびってねぇ?」

ーーーーあぁ、そっか。

僕は、観念したように笑った。


「……視られたのですね」 

康介の特殊能力だ。時間を遡って、視る事ができる。おそらく、僕に式神をつけて、見張らせ、その上で、僕にとって1番都合の悪い事を視たのだろう。

「さぁ、どうかな。お前のご想像におまかせするよ」

「康介様に、視られないよう出来るだけ式神を使ってたんですけどね」

式神は、同業他者には「見られず」相手とやり取りや監視ができるはずだ。康介の霊力が高いことは分かりきっていた。勘の良さも。その上で細心の注意を払ったつもりだったのだが。  

僕の式神よりも康介様の式神と『視る』力の方が上ってことか……。


「まだまだ小さい融が、俺を騙すのは、早かったってことだね、で?」 

で?と聞くところを見ると、全てを把握なさってる訳ではないと言うことか。または、答え合わせをしたいのか。

「全部お話する筈ないでしょう。答え合わせもするつもりないです。ただ……おおよそ康介様のご想像通り、ですよ」

「……お前のことだ、それなりのシナリオなんだろうな?」

穏やかな口調は消え、鋭く光る眼は獲物を狙う獣そのものだ。