「アイツさ、礼衣ちゃんが亡くなった後も黙って、ただ父親と家の敷いたレール通りに過ごしてたよな。変なとこ優等生すぎんだよ。我慢強いって言うかさ。だから自分の事になると、まるで何も話さないし話せない。大事な事になればなる程。そうやって、今まで誰も志築の声なんて聞いてやろうともしなかったんだろうな」


「………僕は志築様の支えになりたい等と傲慢なことは言いません。ただ、志築様の願いは叶えて差し上げたい。それだけです……」

僕は、拳を握り締めると、康介の赤い瞳を真っ直ぐに見つめた。

「お前の忠誠心は認めるよ。だけどな、それすらも志築の抱えてるものの一つに入ることを覚えとけよ」

「……承知致しました。」 

「なぁ……俺と志築に黙ってることあるよな?」

煙草を胸ポケットに仕舞いながら、康介が、射抜くような鋭い視線を僕に向けた。