俺は、信じられなくて、思わず口を覆った。
「礼衣ちゃんは、自殺じゃなかったのかよっ」
「俺は……礼衣を殺した真遥を殺す為に今まで黙って当主なんてもんやってきたんだ。アイツは狂ってる。……俺が殺す」
ーーーーそういうことか……。
志築の心の隅にどんなに拭っても取れない染み付いた錆みたいなものがあるのは分かっていた。それが真遥のせいなのか、礼衣の死が原因なのか、母親の死なのか、いくつもの要素が複雑に絡み合っていて断定が出来なかった。
志築は自分が思ってるよりも脆い。もっと汚れて泥まみれになっててもおかしくないのに周りの欲には染まらない。
自分では割り切ってるつもりなんだろうが、生まれつきの性質と当主として、自分が果たさなければならない重圧とで、本来の志築という人間の守られるべき心の境目があやふやだ。
志築が人を殺してしまったらギリギリの心のバランスも崩れる、そんな気がして、俺は、お前に殺しだけは、させられない。
ーーーー絶対に。