「っ……、あのね、何が、どうなってそう思う訳?あの志築なんて、何とも思ってない」 

「へぇ、俺の勘違い?の割に当主は、お前に甘いよな。大体さー、あんな女遊び激しい当主が、お前にだけは、手ぇださねぇの知ってた?」

「それは……ただの仕事相手だからでしょ?それか興味ないんでしょ。女の子に不自由してないわけだし。いくら、あの志築でも、そのあたりの分別は、さすがにあると信じたい」

「男ってのはさ、そんな器用な生き物でも、安全性の高い生き物でもない訳。ヤリたい時にヤレりゃいいんだよ」

気怠そうに、金髪頭に両手を後ろに回しながら幸太が言った。

「最低ね……。あんたも、志築も」

「女のお前には、わかんねーよ」

「……わかりたくもないけどね」

あっそ、どうせ親に決められた相手と結婚させられんだからさ、テキトーに遊んでなきゃやってらんねーよ、と幸太が付け加えて、少し冷めたコーヒーをやっと飲み始めた。

志築の女遊びが派手なのも、そういう理由があるんだろうか。それとも……礼衣の事が忘れられない……からだろうか。なぜだか、少し心がチクンとした。

「ま、当主とお前の関係なんて興味ねーけどさ、甘いのは事実だよ。甘すぎるくらいにな、今回だって、お前に俺らっていう護衛つけてさ。当主は、お前も利用するべきだろ?」 

(……護衛、やっぱり私につけたんだ。) 

「……ねえ、幸太、文の内容教えてよ」

「いいぜ、協力してやろうか?ただし条件つきで」

ずいっとこちらに顔を近づけて、ニヤリと口角を上げた、幸太の左耳のピアスが光って揺れた。