「えっと……霧矢さん、その、呼び方は、全然いいんです。正式に御津宮当主付きの封印師になったとはいえ、幸太の言うように、子供の頃からの付き合いですし。それより、志築は、何で私を……」

「……申し訳ないですが、志築さんが、冴衣さんにお話されないことを、俺たちが、お伝えすることはできません」

几帳面に、少しだけ頭を下げると、霧矢が、幸太に視線を移した。

「幸太、分かったな?」

「はいはい!言わねーよ」

霧矢から、念を押された幸太は、めんどくせーと呟いて、プイッと車窓に向けて顔を背けた。

ーーーー志築は、三鈴家と接触、と言ってた。長らく口を閉ざしてきた、三鈴家が、なぜ今のタイミングで、文など寄越してきたのだろうか。それと、一番気になるのは、この件に関して、志築が、私を蚊帳の外にするのは何故か?


「……三鈴家は、誰が来るんですか?」 

真っ直ぐに前を見つめたまま、霧矢の目線が揺らぐことはない。

左側の幸太をちらりと見遣るが、気怠そうに車窓枠に肘をつきながら、外の景色を眺めている。

(はぁ……駄目か……)

「冴衣、もう着くぞ」

タクシーが、舗道から、私有道に入ったところで、幸太が、人差し指でコンコンと窓を鳴らした。