あの後、すぐに迎えにきたタクシーで、私は、夏宮兄弟と、共に港区にある夏宮家別邸へ移動することになった。

志築たちは先に別タクシーで夜の作戦会議兼ねるとのことで、秋宮家本家へと向かった。

タクシーの車内では、幸太が、秋宮家に俺も行きたかったと、五月蝿く(うるさく)駄々をこねている。

「……ちょっと、何でこの並びな訳?」

私を挟むようにして、右に霧矢、左に幸太だ。
霧矢も幸太も身長は、決して低くない。むしろ二人とも180超えの高身長だ。

「俺、兄貴の横とかマジ無理だから!」 

「……俺に見下ろされるのがそんなに嫌か?」

薄く笑みを浮かべながら、霧矢が幸太を煽る。
身長は、霧矢の方が、幸太より三センチほど高い。勿論、そのことは、幸太の負けん気とプライドを充分に刺激する材料ではある。

「おいっ!テメェ!」 

「ちょっ、幸太!暴れないでよっ!」 

霧矢に、掴みかからんばかりの勢いの幸太を横目に思わず、文句と共に大きな溜息がついて出た。  

「……おい冴衣、誰のせいで俺らが夏宮別邸に行くと思ってんの?」 

「え?それ、どういうこと?」   

「幸太!……志築さんに、言われたこと忘れたのか?あと、冴衣さんは、御津宮当主付きの封印師だぞ。御名を呼び捨てるなど、無礼だぞ!」

やや苛立ちを含みながら、霧矢が幸太を叱責した。   

「はっ?タメだし、ガキの頃から顔合わしてんのに今更なんだよっ!だよな、冴衣?」

同調しろとばかりに、幸太が、勝気な眼差しを私に向ける。