ーーーー「志築、私にも内容教えてよ」

私は、瞳を真っ直ぐに志築に向けた。  

この雰囲気だと、文の届いた夏宮兄弟は勿論、分家筆頭秋宮融も既に内容を把握している。薄茶色の瞳はこちらを一度ちらりと見たが口元に右手を当てるとすぐさま視線をずらした。 

「……冴衣は待機。この件は俺と分家で対応する」
「……ちょっと、なにそれ!」

この二年、志築の指令には必ず同行してきた。理由もなく外されるのは初めてだ。  

「冴衣様、志築様もお考えがあってのご決定ですので、その…」

歯切れ悪く、融が言葉を濁した。

「志築、冴衣ちゃんにも、ちゃんと説明してあげたら?冴衣ちゃんだって、もう子供じゃないんだし」

ねっ、とこちらに向かって、康介がにこりと笑った。 

「志っ……」

「説明したとこで、決定は、変わらない。オマエに話すことはないし、連れてもいかない」

私の言葉を遮る様に、志築が静かに言葉を続けた。

「いいか、冴衣。これは当主命令だ。お前は、康介の別邸で夏宮兄弟と待機、以上だ」

やや言葉に圧を感じる、突き放すような言い方だった。今日ほど、強めの口調で命令されたのは初めてだ。三鈴家との接触に私を同席させたくない理由が、何か、あるのかもしれない。 

「今夜、俺と康介と融で行く。融、指定してきた場所と時間で構わないと、式神使って華乃に連絡してくれ。お前らは、冴衣と一緒に、冬宮別邸待機……三鈴家と接触する」

志築が、静かに立ち上がった。