「本日は皆様、お忙しい中、誠に有難う御座いました。」

九十度とも言える角度で、律儀にぺこりと他役員達に何度も頭を下げている。

融のこういうところが助かる。俺が多少やらかしたことも大抵は融が、上手く収めてくれてる。唯一、過保護すぎるところだけが難点だが。

車を運転することは勿論、自転車さえも危ないからと乗らせてもらえない。この間は定食屋で魚の骨が刺さってはいけないからと骨まで取られそうになったことをふと思い出す。さすがに店内だったので断ったけど。

(康介といい、融といい、夏宮兄弟といい、俺の周りはどいつもこいつも……結局手がかかる上に、ほっとけないヤツばっかだ)

一人でに出た溜息に、康介が興味津々でこちらを見ていたが気づかない振りをした。

やがて数分もすれば、俺の圧に当てられた役員達は、そそくさと俺たちだけを残して、綺麗に退出していった。

「……志築さん、申し訳ございません」

先に席を立ち深く頭を下げ、俺に謝罪を述べたのは霧矢だった。

バツの悪そうな、弟の幸太を引っ張りあげるようにして立たせ、グイッと金髪の頭を押さえつけ乱暴に下げさせる。

「痛ってぇな!触んな!自分で下げるって!」

暴れそうな勢いの幸太の頭を、押さえつけたまま霧矢が睨みつける。   

「霧矢……幸太……お前らマジで。今回が本っ気で最後だからな!」

軽く腕組みをしてから、俺は脚を組み直す。俺のいつもの口調に、悪ガキの幸太もやや安堵した様子を見せた。