ピリッとした、この緊張感をものともせず、康介が、小さな欠伸と共に、俺の肩に掌を置きながら、のんびりと口を開いた。

「終わった?……なぁ、志築、とりあえず皆からの報告も聞き終わった訳だし、このあたりで一先ずは、お開きでいいんじゃない?」

ピンと張り詰めた空気をゆるりと剥ぎ取る様に、康介が、穏やな笑みを浮かべながら、俺に会議のお開きを促す。

この緊迫した状況をどうにかして欲しいと懇願するような目で、康介を見つめていた融に、康介が目配せをし、融が、小さくぺこりとおじきをする。
 
いつもこのパターンだよな。俺がキレて、融が康介を介して、俺を宥めにかかる。

「……はいはい。じゃあ皆さん解散ってことで」 

康介と融のやり取りを見て見ぬふりしながら、気怠そうに両手を挙げ、俺は、役員達を追い払うように手を振った。

それを合図に、役員達は、一斉に立ち上がり次々と会議室を後にする。

ふと気づくと、こちらに、ぐいと顔を寄せて覗き込むようにして康介が囁いた。

「しーちゃん、怒ってんの?ご機嫌直して」 

「……っ、お前な!近いし!……その呼び方もやめろ!」

「ふっ、お前、ちゃんと顔赤くすんのな、かーわい」

「康介!てめぇマジで!やめろっ!変な言い方すんな!」 

あー、こんな奴に構ってられるか。
ぷいっと肘をついて左の方に顔を向けると融が律儀に役員共に挨拶をしている。