「おい、兄貴!この間の狩りも何だよ?遅すぎて朝になっちまうかと思ったぜ!」 

「バカめ。狩りは速さではない。正確さが大切だ」

「言い訳すんなよっ!テメェの実力不足なんだよ!」 

「おい、貴様、何だとっ!」

霧矢が、表情一つ変えず、着席したまま右隣りの幸太の胸ぐらを容赦なく掴んだ。ギリっと首元に力を込める。

「ふっ、なんだよ、やれよ。兄貴は、どうせ俺には勝てない」

ニヤリと勝ち誇ったように笑う幸太に、霧矢は、胸ぐらを掴んでいた手をゆっくりと離す。

「ふん……幼稚だな。そういう子供なところがお前が当主には、向いていない理由だ。そもそも、お前の狩りの速さは認めるが、雑だ。狩りは、速ければいいというものではない。術の美しさも計算もなにもない、独りよがりの強さを、この様な場で誇示するものではない」

冷たい眼差しは、そのままに口元には、薄く笑みを浮かべた。

「は?テメェ!表に出ろよ!次期当主が、誰がわからせてやる!」 

「幸太!!その傍若無人な振る舞いからして、当主に、相応しくないというのがわからないのかっ」

「あぁ?ビビってんのかよ、グズグズ言ってねぇで、かかってこいよ。なあ!」

幸太が、バンッと机を右拳を叩きつけた。


「やめだっ!!」

怒号と共に、会議室全体をバリバリッと雷鳴音が包みこんだと同時に、俺は霊力を発動させた。そして、突き刺すように鋭く冷たい視線を二人に向ける。

「お前ら喧嘩は他所でやれよ!誰の前だと思ってんだ!!」

再びパンッと音がして会議室の電灯が一つ割れて消える。

一瞬にして会議室全体がしんと静まり返る。