「……霧矢、お前、ここ葬式会場じゃないんだからさ。」 

クククッと笑いを堪えきれない、康介が、肩を震わせた。

「……康介さん、お言葉ですが、僕は任務に対して常に真摯に向き合っています。狩るということは、死者を弔うがごと……」

「兄貴!煩ぇんだよ。そもそもテメェが変な拘りで黒しか着ねぇのが康介さんの気に障ってんだよ!」

身を乗り出して、霧矢の目の前で返答を遮るのは、弟の幸太だ。

「お前こそ、何だその格好は。少しは礼儀を弁えろ」

黒のスウェットに白いデニムというラフな格好の幸太を、上から下まで見ながら、冷ややかな視線を向ける。 

「うるせーな!兄貴に服装とやかく言われたくねぇんだよっ」

はぁぁぁーーーーこの兄弟ときたら顔を合わせば喧嘩ばかりだ。

「……幸太、俺は、人の服装や女性の好みに口出す気はさらさらないよ、個人の自由だからね」

にっこりと微笑む康介を横目に、俺はまた一つため息を吐き出した。

(女の好みは余計だろ……)


「おい、兄に向かって随分と無礼な言い方だな、幸太。誰が次期当主だと思っ……」

「俺だよ!俺!狩りだって俺のが早いしな!」  


(ったく、こいつらは、学習能力ゼロだな)