一見、死んだ人間＝霊を使って『珠』という寿命を生み出し、現在生きている人間に使うのであれば善策のように思えるが、実際は人殺し斡旋と何も変わらない。

『珠』になるまで、『影』が人間を苦しめようが、殺そうが、影縫師は一切の関与をしない。

だから相対する影狩師は、今生きている人間を不条理に殺させない為に、夜な夜な『影』を狩り続けている。

「つまり、ここ一か月で、雑魚レベルの影が異様に増えてるってことだよな？それも今まで影が徒党を組むのってあんまなかったけど。雑魚でも二つ三つと寄られると、確かに面倒だよね、俺らにとってはさ。…うーん。確かに今までの時司のやり方とは、違うよなぁ。」　　

口元に右手を当てながら、俺は、右隣に視線を流した。

「元々、時司は大物の『珠』狙いだからね。こちらも狩るのが大変だけど、向こうも影を縫いつけるのにかなりの霊力と人手を割いている。
今も大掛かりな影も、勿論いるけど、それよりも最近は小さいのが圧倒的に多いね。
三鈴家の手の者の仕業かな。
こちらの狩りにくさも熟知して小さな影を敢えて沢山縫いつけてるように思えるな。
質より量だね…。あと影が群れることはあまりないけど、実際二つ三つの影を相手にするとなると、こちらも綿密に計画立てて狩りに行かないと危険を伴うね。
それこそ、怪我しちゃわないように気をつけなきゃね」

人差し指を口元に当てながら、にっこりとこちらに向けられた笑顔に、俺はこれでもかと嫌悪感たっぷりの視線を向けるが、本人は全く気にしてない。