見開かれた、紫色の大きな瞳が零れ落ちそうな勢いだ。

「ばかっ!違っ……」

むぐっと左掌で俺は、やや声量の大きくなった融の口を乱雑に塞いだ。

「康介、マジでやめろ。コイツは冗談通じねぇんだからさぁ」

くくくっと笑いを押し殺して、康介が笑みを隠す様に下を向いた。

(……ったく。)

手元に置いてある分厚い書類にざっと目を通しながら、俺は、分家役員からの報告を促した。

「はい、じゃあ早速だけど三鈴家についての報告してくれる?」

今回の関東連合会議の主な議題は最近勢力を増している影縫師三鈴家についてだ。

そもそも七年程前までは三鈴家は優秀な影狩師の一門だった。

それがある時、三鈴家の当時の当主だった三鈴封水(みすずふうすい)氏が、影縫師本家にして最高権力を誇る時司家へと影縫師として弟子入りを志願したのが事の発端だ。