「あ、言い忘れた。冴衣ちゃんも志築と狩り行く時は、ちゃんと気をつけなきゃだめだよ。志築、可愛い女の子には、すぐちょっかい出すからさ」 

康介は、悪戯っぽく笑うと、小さく舌をペロッと出した。 

「おい、康介!誰がだよ」

それ、お前だろ、と志築が突っ込んだ。

「さぁ、どうだろね」


冬宮康介(ふゆみやこうすけ)は、志築の一つ年上の二十四歳。御津宮家の三つある分家の一つ、冬宮家の若き当主であり、関東連合最高議長代理。

父親は関東連合会の最高議長冬宮憲俊(のりとし)氏。

憲俊氏は、元々は冬宮家の一人娘である美加(みか)さんの婿養子として一般家庭から婿入りしたが、結婚後間もなく、憲俊氏の地元大阪堺にて不動産経営の手腕を発揮し、僅か一代にして莫大な財力を手に入れた。

一昨年、大学を卒業した康介に当主の座を譲り、現在は、拠点を大阪に移して、不動産会社取締役社長として日本中を飛び回っているそうだ。

康介の母親にあたる、美加さんは、優秀な影狩師だったが、十年ほど前に指令中亡くなっている。美加さんの優れた、影狩師としての能力は、冬宮家の嫡男である康介に受け継がれた。