「マスクね……てか、俺が風邪とかも恥ずかしいじゃん」    

(風邪が恥ずかしいって……どう言う感覚なの)

「怪我よりマシでしょ?」

私が、冷ややかな視線を投げると、志築は、ようやく諦めたのか、両手を挙げて見せる。

「はいはい、りょーかい。もう言わない。どうせ明日は来るんだし。……ということでさ、ねえ冴衣。この後ちょっと付き合ってよ」  

志築は、深夜の狩り終わりに決まって私をある場所へと誘う。

「私、今日、塩の気分なんだけど?」

いつの間にか、隣に並んでいた志築の薄茶の瞳がやや僅かに開いたように見えた。

「へーっ。冴衣と被る事もあるんだな」

「そこの商店街を右行って、左の筋入ったとこだよ」 

志築は、自慢げに、ここらで有名なのであろう人気塩ラーメン店の位置情報を披露する。志築の案内してくれる、ラーメン屋は今まで一度もハズレがない。

むしろ期待値以上の名店揃い。

無論、深夜営業ばっちり、こんなことを夜な夜な生業としている、私達には、本当に有難い。