ーーーーまただ。志築の馬鹿。

素直に聞けない私も悪いとは思うけど、わかんない振りする志築は、もっとタチが悪い。志築は、いつもそう。本当のことなんて、言わないし、あえて、言ってくれない。

私に言ったって仕方ないと思ってるのかもしれないけど、それでも、少し位、重荷を分けてくれてもいいのにと思うのは、間違っているのだろうか。

これ以上の沈黙は、少し気まずいと思っていたら、先に志築が口を開いた。

「……さっきの影さ、どう思う?」

「何?どうしたの?……志築が怪我する位だから、影縫師の仕業でしょ。それも一流の」

「だよなぁ」

「何?」  

「いや、別にー。明日、アイツらから聞くし」 

志築が怪我すること自体、本当に珍しい。
御津宮家の当主であり、影狩師としては右に出るものがいないほどの実力を兼ね備えてる。

そんな志築が多少なりとも怪我をしたとなれば、一流影縫師の仕業の可能性が高いだろう。

一流影縫師といえば、名門時司(ときつかさ)家か、はたまた、最近勢力を増していると言われる三鈴(みすず)家か…?

「明日なぁ。どうすっかなぁ……」

絆創膏の上を、人差し指で、撫でながら独り言のように、志築が呟いた。

「気になるの?三日もあれば治ると思うけど……そんなに見られたくないなら、風邪ひいたとかなんとかいって、マスクでもしとけば?とりあえず明日の会議、今更欠席できないよ」