「はい、おつかれ!こっちも入れといて」
志築から、ぶっきらぼうにポンと投げられた小さな珠を左手で受け取ると、私は、大きい方の『御印』へ、その珠を人差し指で押しやり、中に閉じ込める。
珠は押しこんだ人差し指から粘土のように、ぐにゃりと柔らかく形を変えると、するすると吸い込まれていった。「影」は狩られると、小さく黒く歪な「珠」となる。
完全に消滅させる方法は、今のところない。
「珠」を封印した『御印』は、霊印神社の神主である私のの父親が管理している。
この「珠」は、人間の「寿命」に変換できる為、影縫師達は、さまざまな駆け引きに、この「珠」を、利用している。莫大なカネと引き換えに。
そんな私利私欲にまみれた影縫師達の目から隠すため、封印した「珠」は、厳重に何度も結界を張り重ねた霊印家の倉に保管されている。
「狩り完了だな!」
ニッとこちらに向けられた、志築の笑顔は、歳よりも少し幼く見えた。結界を解きながら志築に近づくと、私は、小さくため息を吐いた。
「はい、これ」
私は、腕を目一杯伸ばして長身の志築の顔の真ん中に、それを突き出してやる。
あっという間に、志築の表情に曇りが生じた。