「グゥゥーーッ……お……のれ……」

女の心臓を貫いた霊刀銀河を引き抜いたと同時に、再度、穏やかな光が、ふわりと放たれて、小さな珠へと姿を変えるとコロンと落ちた。

「はぁっはぁ…っはぁっ、冴衣?」

振り返り、冴衣の姿を確認する。

ーーーー息があがる。呼吸速度と共に心臓も跳ね上がっていた。


「キライ」
「キライ」 


「いじめないで」
「いじめないで」

冴衣の前には、小さな影二つが、繰り返し呟きながら大きな影へと変貌を遂げる。

「大丈夫、封印する」

冴衣は、中指と人差し指で言霊符を影二つにとばすと、慣れた手つきで印を結ぶ。 

「マン キリク マン サク タラーク
我が名においてその身を滅さん 封印の(こと)()

言霊符は、言霊と合わさるとよりその効力を増す。

「やめて」
「やめて」 

言霊符は、影を真っ白な光で包むと少しずつ影を解くように小さくなっていく。 

「ヴゥアーー!!グゥウゥ…」

低く唸るように言葉を発したのを最後にほろりと小さな「珠」となり『御印』の中へ吸い込まれていった。

「冴衣、大丈夫か?」

こくんと頷いて、冴衣がにこりと笑った。

冴衣の封印のやり方は綺麗だ。

「珠」となった影を、流れるように石に閉じ込めていく。真っ白な石に墨で梵字が記された『御印』は影が入ると黒く染まる。