ぷっ……黙んのかよ。

そうそう、しつこい男は嫌われんのよ、しーちゃん。

右隣では、ギブスをはめた幸太が、笑うのを堪えて口元を覆った。

そのつま先を幸太の隣から霧矢が、踏んづける。

「痛ってーな!クソ兄貴!何すんだよ!」

「貴様の胸に手を当てて考えてみるんだな」

「てめぇに言われたくねーんだよっ」

今度は、幸太がギブスを振り上げると、霧矢の鳩尾(みぞおち)に食い込ませた。


「……っく……」

いつもは、冷静な霧矢の目の色が変わる。

「いいだろう、この場で誰が、次期夏宮当主かわからせてやろう!」

おいおい、またしーちゃんに怒られますよ。

「ちょっ……霧矢も幸太もその位にしてよ。
幸太は、まだ包帯ぐるぐる巻きだしー」

ふわふわの栗色の髪を揺らすと、透が、霧矢と幸太の仲裁に入る。

その様子を見ながら冴衣ちゃんが、黒髪を耳に掛けながら、呆れた様にため息をついた。

(やれやれ、いつもと同じだな)

俺は、欠伸を一つすると両手を頭の後ろに組んだ。


「あはははははっ」



ーーーー声を上げて笑ったのは、志築だった。