なるほどな。実体をもつほどの力は、ない影二つか。こちらの二体は後回しだ、攻撃する術を持っているかどうかも曖昧だ。

仮に、持っていたとして、どうせこの程度の影なら攻撃すら、俺達には当たらない。冴衣に傷が付くこともないだろう。


ーーーー片付けるのは、本体のこっちの女だ。

「冴衣、印準備しとけよ」

俺は、右掌を突き出し言霊を唱える。

「キリク ア カン シャ ベイ サク ユ タラーク 我が名において現れし銀の河」

ーーーー掌から光が現れその手には刀が宿る。 

言霊で霊力を刀の形へと変え、影を狩る。

御津宮家に伝わる霊刀『銀河(ぎんが)

その霊刀にまとう、霊力の濃淡が碧く輝き、渦を巻く様から名付けられたいう。

「小僧ごときがっ、虫唾がはしるっ!」

女の髪の毛が、ざわざわと空を漂い、長い蛇がとぐろを巻くように揺れ蠢く。  

「俺、今まで狩れなかった影いねぇんだよな!どっちが速いかな!」  


ーーーー狩るか狩られるか。

言い終わるか終わらなかいかの間に、俺は地を蹴り、女の間合いに斬り込む。

女は、ニヤリと笑うと長い髪を数本ずつ重ね、降り注ぐ長い刃物のように俺へと向けた。

髪は、俺に近づくほどに長くうねりを増し、絡みつくようにまとわりついてくる。

「ちっ!」

その一本一本を避けながら、刃物と化した髪の毛を切り裂いていく。俺は、軽く舌打ちしながら身をかわし、女の心臓を貫くことだけを考える。