暫く、俺の目を見てた冴衣の長い睫毛が、下を向いた。冴衣は、黙ったままだが、よく見れば、少しだけ肩が震えている。

「おい、泣くな」

「泣いて、ない」

冴衣が、包帯の巻かれた右手で目元を押さえた。

「あー……。泣いてんじゃん。俺さー……冴衣に泣かれんのマジで嫌なんだよ。……いいから、俺の側で冴衣は、笑ってればいいの。守られてればいいんだよ」

小さな背中を摩ってやる。

「守られて、ばっかりなんか……こ……子供扱いしないで」

冴衣の背中をゆっくり包み込んだ。

「してないよ」

「何?」

冴衣が、俺を見上げた。

「冴衣のこと、子供だなんて、思ってことなんか一度もないよ」

冴衣は、俺を見つめながら、ほんのり頬を染めた。