「もうっ……なんで、志築は」 

「俺が何?」
 
包帯で巻かれた、冴衣の手を捕まえると、冴衣が、押し黙った、いつもみたいに。

「言えよ、聞いてやるから」

「……ちゃんと答えてくれるの?」
 
俺のもう片方の掌は、冴衣の頬に触れたままだ。

「答えるよ。もう、はぐらかさない」 
 
黒い大きな瞳が、俺だけを映す。

「……志築、は、ラクになった?私は……礼衣みたいには……志築の側に居てあげられないから……」

「そんなん……冴衣にいつ頼んだんだよ」

「だって……」

「俺は、冴衣を礼衣だなんて思ってないよ」

「……ごめん、ね」

冴衣の大きな瞳から、涙がころんと転がった。


ーーーー俺は、小さくため息を吐いた。

何でそう思うかな。自分ではなくて礼衣が生きていれば良かったのに、の、『ごめんね』だ。

冴衣の頬に触れて、涙を掬ってやる。

「俺はさ、冴衣に生きてて欲しくて、守ってやりたくて側に置いてんだけど?」 

冴衣が、俺を見ると難しい顔をして、視線を逸らした。