俺の寿命が、短くなったという事実で、また泣きそうな目で、冴衣がこちらを覗き込む。

……困ったな。

何て言おうか。

泣かせたくなかった、それだけなんだけどな。


「別にー……」

「志築?」

俺は、考えてるフリをしながら、冴衣の頬に触れた。ちゃんと体温がある。


「……内緒」

「え?」

冴衣の、黒い大きな瞳が、パチクリと動いた。

「ちょ……と、志築、ちゃんと説明してよ」

俺は頭を掻いた。説明ね。

「大体さー、お前、この俺の命令違反してんだからなっ!あとで始末書書けよ」

「……え?何、なの……そんな、理由……?」

さっきまで泣いてたのに、冴衣は、段々と訝しげな表情になる。よし、涙止まったな。

「そうだよ。あ、何?……好きだからーとか言うと思った?言わないよ」 

「ばっ、ばか!思ってない!」

顔を近づけてニッと笑った俺を、冴衣が、顔を真っ赤にして、そっぽを向いた。