長い睫毛は閉じられ、規則正しい呼吸音が静かに聞こえている。

思わず手を伸ばしていた。起こさないように。柔らかい髪にそっと触れた時だった。
 
「…っん…」

茶がかった瞳が開き、こちらを驚いたように見つめた。

「……え、……冴……衣……?」

「あ……の私……」

私の言葉を遮るように、気づいたら志築の腕の中に包み込まれていた。

長い両手にコワレモノを扱うように大切に抱き込まれて、耳元に志築の頬が、触れるのを感じた。  

「冴衣……」

志築の体温が、じんわり伝わって志築の匂いに安心して、身体中の力が抜けてしまいそうになる。

「……マジで、もう起きないかと思った……」   

「志築……」

こんな不安そうな声は初めて聞いた。

「……ちゃんと、あったかいな」

さっきより、強くぎゅっと抱きしめられるのと自分の跳ねる鼓動で、呼吸が苦しくなる。