「僕は……志、築さま、……に」

「何にもしてやれないなんて言うなよな。それこそ傲慢だ。……もう充分だって言ってんの」

こくんと素直に頷くと、融が涙を袖で拭った。

「もうちょい、ラクに息吸えば?お前が潰れたら、志築が泣くよ」

栗色の髪が、俺の腕の中でふわりと風に揺れるのを見ながら、俺は雲一つない空を見上げた。



(真遥、オマエも心配すんな……俺がお前の代わりに志築の側に居るから……)

「ん?」

「康介様?どうかされましたか?」

「いや、なんでもない」


ーーーー何故だが、季節外れの蝉の鳴き声が聞こえた気がした。