「結果的に、僕は、冴衣様を危険に晒した上、志築様のお命を……っ」

俺は、右手で栗色の髪をくしゃっと撫でた。

「誰も死ななかったのは、お前のよく出来た筋書きのおかげだろ、顔あげろ」

「……康、介様……」 

「冴衣ちゃんも、じき目を覚ます。志築の術は完璧だった。アイツが選んだ選択なら俺は何も言えないし、それでいい。……志築の数少ない『自由』だから……。俺はただ、これからも志築を側に居て、守ってやるだけ。……アイツが嫌になるくらいな」

ポロポロと紫色の瞳から、雫が溢れていく。

「ばか、男子が泣くな」

俺は、融から煙草を取り上げて火を消すと、肩を震わせてる、融の身体を抱きしめてやる。


志築といい、コイツといい、もう少し自分を甘やかして、物事考えられないもんかね。


「しんどかったな。……だけどな、お前のお陰で志築は救われた。これは紛れもない事実だ。……胸を張れよ」