「……康介様」


ふわりと栗色の髪を風に纏わせながら、紫色の瞳が俺の隣に立つと、俺を伺うように見上げた。

「どした?志築見てきたんだろ?……ちゃんと息して、寝てただろ?」

「……はい、呼吸も安定して、熱も下がりましたので、もうご心配を要らないかと」

「手当てどーも」

俺が、包帯の巻かれた左手を挙げると、生真面目に軽く頭を下げてから、融が、煙草を取り出した。


「……聞かないのですか?」

ゆっくり煙を吐き出しながら、融が、俺を見上げる。

「何?叱ってほしいのか?」

融は、空へと登る煙草の煙を眺めながら、ポツンと呟いた。


「僕は……間違えたのでしょうか?」

「珍しいな。反省してんのか?志築を欺いて、冴衣ちゃん引っ張り出した事」


融が、伏せ目がちに下を向いた。