「もう、我慢すんな」

「康介……何処にも、行くな……」

「行かないから……お前の隣に嫌ってほど居てやるから。だから……もう、一人で泣くな」


康介の肩にポタンと小さな雫が落ちた。


自分の瞳から、溢れたことに気づくのに少し時間がかかった。涙なんて、最後にちゃんと流したのは、いつだっただろうか。


そっか。もう、我慢しなくていいのか……。


康介の温もりが、もう、いいよって言われてるみたいで、俺は、康介に体を預けたまま、瞳を閉じた。

俺は、ずっと誰かにそう言って欲しかったんだ。大丈夫だと。泣かなくても一人じゃないんだと。

「……ずっとガキのまま居られたら、良かったのにな」 

小さく呟かれた康介の言葉が、泡のようにふわりと水面に向かって揺らめくと共に、俺の意識は、再び、水底へとゆっくりと堕ちていった。


ーーーー康介のぬくもりと共に。