「……駄々こねんな。……違うって、言ってんだろ。いいかげん、ちゃんと甘えろよ」

康介が、俺を背中を子供をあやすように、ゆっくり背中を摩る。


「……俺は」

「お前は一人じゃない……もう、大丈夫だから」 



ーーーー大丈夫だから。


「……康、介……」 

思わず、俺は、康介の背中を握りしめていた。


強く力を込めた掌のおかげて、康介の鼓動が響いて、康介の体温がじんわり伝染していく。

あの時、真遥に抱きしめられた時みたいに、俺は、ひどく、ほっとした。

ずっと誰かに真遥がしてくれたみたいに抱きしめて欲しかったのかもしれない。弱くて壊れそうな心を。

ずっと俺は一人だと思ってたから。

御津宮の当主として一人でちゃんと立たなければと気負ってた。

真遥みたいに。真遥の代わりに。

そのくせ真遥が居なくなって、礼衣に会えなくなって、俺をちゃんと見てくれるのは、俺を心から必要としてくれるのは、誰も居なくなった、そんな風に思ってた。


御津宮家当主の肩書きも重たかったんだ。


次男として育てられた俺に、今までずっと期待されてきた真遥の代わりなんて、俺には出来なくて。
 
でも誰も死なせたくなくて。

何一つ手放したくないのに、心は、いつもいつも限界だったから。

苦しかった。