目をぎゅっと瞑って受け身を取ろうと身体を丸くする。

何秒たったか。衝撃も痛みもなかなか来ない。


「しづ、おにいちゃんがきたからだいじょうぶだよ」

真遥は、セミを片手に、もう片方はおれの手を握ってた。

ゆっくり目を開けると俺は、浮いていた。


「え!ええっ!」

真遥に右手を繋がれて、俺は、ゆっくりと宙を歩いて地面に着地した。


「すごーい!まはるすごいね!まほうつかいみたいっ」

「……たいしたことないよ、しづもぼくのおとうとだ、きっとすぐできるようになるよ」

興奮したおれの頭をポンと撫でながら、真遥がにこりと笑った。


「はい、これ」

コワレモノを扱うかのように、そっと右手にぎられた、ソレを俺の目の前に差し出した。

「わぁ、まはる!あぶらぜみかな?すごいね、おれ、ずかんでしかみたことなかった」

俺は、真遥の指の間から見えている、アブラゼミの頭をそおっとなでた。


「むしかごもってくる」

駆け出そうとした俺を、真遥が、引き留めた。