背中におぶった弟は、重症にも関わらず、減らず口ばかりを、叩いている。これだけ話せるのならば、問題ないだろう。俺は、心の中で、安堵する。

「おろせ!ふざけ、んなよ!……ちくしょー、な、んだよっ」 

「鍵つけておいて正解だったな」

幸太をおぶったまま、俺は、唇を持ち上げた。

ワザとつけたままにしておいた、バイクの鍵。

「まんまと……俺、兄貴の掌で……転がされてのかよ……ちくしょ……傷、……治った、ら……、勝負だ……からな。」

「楽しみにしてる」

散々憎まれ口を叩きながらも、素直に身体を預ける幸太など、もうこれ一度きりかもしれない。

自然と笑みが溢れていた。そういえば、小さい頃、幸太は病弱でよく熱を出した。熱を出すたびに眠れない幸太をよくお負ってやった。

母親が死んでから、コイツをお負るのが俺の役目だったことをふと思い出す。

ーーーーデカくなったもんだ、図体も態度も。