「冴……衣?何……して」   

「はぁっ……はっ……ごめ、んね。志築……」

「何、した?……冴衣っ!何した!」

ーーーー冴衣が言霊を……。あの言霊は。
冴衣は、唱え切ってしまった。

さっきのは……自身を、器に?

「はっ……はぁっ……礼衣が、したかったこと、……してあげたかったから」

「魂を……媒介にしたのか?」


ーーーー手が震えてくる。魂を媒介に真遥ごと封印するなんて、そんなこと、そんなことしたら……

真遥は、すでに体の半分以上が崩れて、黒い影となり、形を成さないモノへと変化していた。

そして、その影はゆっくりと冴衣へと吸い込まれていく。


「大、丈夫。……うまくいったから……礼衣も安心でき、る。……志築も」

冴衣が、ゆっくりと倒れ込むように、俺の前に跪いた。

血に濡れた掌が、俺の頬に触れる。

「ダメだ……冴衣……こんな事、俺は!」

そのまま冴衣の掌が、俺の刺し傷を少しだけ治癒していく。

「何、してる?……」

「……怪我、治す……の最後だか、ら」

瞬く間に、冴衣の掌はおろか、冴衣の身体には黒色の梵字が刻まれていく。