ふうん。
と、つまらなさそうに志築は、相槌を打っただけだった。

志築の半歩後ろから、歩く私からは、志築の長身も相まって、まだ柳の木の後ろに蠢く女の姿までは、うまく捉えきれない。 

「……だからと言って、情状酌量の余地無しだよ。人殺しはダメだろ」

ーーーーそう。 

この柳の木でここ二か月で三人もの若い女性が首を吊った。

それぞれに人として誰でも持っている悩みや苦しみはあったとしても、死への引き金を他者が引くのはお角違いだ。どんな理由があっても、影が、今生きている人間の命を奪うなんてことが、あってはいけない。 

そんな事分かってる。分かってはいるけど……。

「……でも誰も望んで『影』になりたい訳じゃないと思うの」

ぽつりと呟くように発した、私の言葉は志築まで届いただろうか。

「冴衣、あんま『影』に寄り添いすぎんのもどうかな……どうせ狩るんだ」  

淡々とした口調の冷ややかな返答に、私は、いつも違和感を感じる。 

ーーーー志築が、影を狩るときは酷く無機質だ。

普段は温和で優しい。礼衣の事があってから、志築の私に対する態度は、過保護すぎる位だ。

でも狩りなると人が変わる。何の感情もなく影を狩り、『珠』に封印する。

それを繰り返す。何度も何度も。
私達の魂が終わりを告げるまで、永遠に……。