「はぁっ、はぁっ、はっ」

(俺……まだ生きてる?)

俺は、ほとんど霊力を使い切って、あの一撃にかけた。俺の血を使って最大限の攻撃だった。
ただ、術を、発動させた瞬間、真遥の刃が振りかぶるのが見えた。

(真遥は?……)

舞い上がった灰が風で吹き飛んでいき、視界がクリアになっていく。地面にポタリポタリと赤い雫が滴るのが見えた。


「……真、遥……」


真遥の左腕は、吹き飛んでいた。

それでも尚、真遥は薄く笑い、目の前の獲物を突き刺さした刃をゆっくりと引いた。

崩れ落ちるように倒れる長身の男。

「や……めろ!」

乾いた声が出た。やめろ。誰も殺すな!
俺から奪うな!

「康介っ!」

俺は、崩れ落ちる康介へと手を伸ばす。這うようにして康介の元へと血溜まりの中を少しずつ掻き分けていく。

(俺を庇ったせいだ)

「大……した……ことない」

「ダメだ!しゃべんな!」

康介の胸元から、とくとくと血が溢れ出す。

俺の掌が赤くそまり、生ぬるい血液が俺自身を染め上げていく。