(だめ……このままじゃあ、志築が)

ーーーー今しかない。私は、霊力を発動させて、手首と腰の拘束を焼き切る。

「はぁっ……はっ……」

今度こそ、礼衣ができなかったことを、私がやり遂げてみせる。

急がないと!志築が!

掌からトクトクと血液が流れる感覚がする。
力の入らない足を無理やり立たせて、柱に手をついた。

「はっ……はぁっ……はっ……」





ーーーー「愚かだな」

真遥の刃が、志築めがけて降り下ろされるのが見える。

ーーーーダメッ!!

「志築っ!」

私のとばした霊力で、真遥の刃が一瞬止まる。


「ふっ……この程度で」

ーーーーパンッと霊力が弾かれると同時に真遥の刀が、志築の腹部に突き刺さった。

(嘘……っ!)

「志築っ」  

康介が、振り返り、その名を叫ぶ。

ずるりと引き抜かれた刀から、血が滴り落ちた。 


「志築っ!!……はぁっ……志……」


意識が、うまく保てない。足が動かない。チャンスは一度切りなのに。真遥の心臓さえ狙えたら。

志築を守りたい。

私は、両手に力を込める。

そして、立っているのもやっとの私の身体は、崩れ落ちる前に、ふわりと抱き止められた。


「冴衣様……お待たせ致しました」